求人したが応募が来ない、ターゲット以外からの応募は来るがターゲットからの応募がない、そんな時は求人の魅力化ができていない可能性があります。
今回は、魅力的な求人票の書き方、求人を魅力化する方法について解説します。
求人票はなぜ重要か?
なぜ求人票は重要なのでしょうか。
それは、求人票の内容によって、応募数や有効応募率が大きく変わってしまうからです。
候補者は「業務内容や入社後の役割は何なのか」「どんなスキルが求められているのか、自分は対象となるのか」「自分はそこで活躍できるのか、貢献できるのか」といったことを求人票を見て考えます。
新卒採用と異なり、即戦力の採用においては、会社名やイメージ、待遇条件だけで応募を決める人はまずいません。
優秀な人材は、自分のスキルが活かせるのか、スキルを伸ばしていけるのか、自分が望むキャリアを歩めるか、そういった部分を重視します。
即戦力採用に必要なポイントを抑えた求人票でないと、候補者の応募率は極端に低くなります。
働く魅力の種類|衛生要因と動機づけ要因
求人の魅力として訴求するポイントを考える際に、臨床心理学者である、フレデリック・ハーズバーグが提唱した、「ハーズバーグの二要因理論(職務満足、不満足を引き起こす要因に関する理論)」が参考になります。
何があると仕事の満足度が高まり、何がないと不満に感じるのか、という要因は転職の場面でも当てはまります。
衛生要因 : 不足すると不満足を引き起こす要素(働きやすさの要素)
動機づけ要因 : 満たされると満足感を得る要素 (やりがいの要素)
衛生要因|働きやすさの魅力
転職における衛生要因は、不足すると「足切り基準」として見られるものです。
ないと転職者が応募に至らないため、情報は明示しましょう。
- 休日休暇:完全週休二日制(土日祝)、年間休日126日など
- 有休取得:初年度付与日数、有休消化率など
- 残業時間:平均月20時間程度(繁忙期1~3月は40時間程度)
└ 固定残業代制(40時間分)、超過した場合は別途支給 - 勤務地:本社(転勤の可能性あり)
└ バックオフィス系は本社に集約しており、転勤可能性は低いです。
└リモートワーク可(平均的に週に2日程度リモートワークを利用しています) - 年収:500〜750万
└ 評価により決定。500〜650万(メンバー)、650〜750万(リーダー) - 賞与:年間4.0ヶ月程度(昨年実績4.5ヶ月)
動機づけ要因|やりがいの要素
動機づけ要因は、満たされると満足感を得られる要素です。
現職の残業が多すぎる、休みが取りづらいなどの働く環境による転職理由が多いのは事実ですが、衛生要因はあくまで足切り基準として作用するものであり、転職者に応募判断をさせるものではありません。
必ず動機づけ要因を記載するようにしてください。
動機づけ要因がスカスカな求人票がよく見られますが、動機づけ要因こそが転職者が求人に応募する理由です。
例えば、仕事内容について、「○○業務全般をお任せします」だけでは、何も伝わりません。
ミッションは何か、具体的に何をやるのか、どんな役割なのか、など具体的に記載し「だからうちに転職するとこんなメリットがある」と伝わるように意識しましょう。
産業用ロボットのソリューション営業をお任せします。
当社の扱うロボットは、人の腕のように動く6軸ロボット。ハンドツールとの組み合わせで多様な用途に対応できます。
そのため、カタログを広げて売れるようなものではなく、顧客のニーズや課題を聞き、自社のロボットや周辺装置、ハンドツールなどを組み合わせ、顧客の課題ごとにソリューションとして提案していく面白みがあります。
応募が増える求人票|7つの具体的なポイント
良い求人 | 悪い求人 |
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仕事内容のイメージがつく 採用ターゲットが明確 仕事内容、ポジション、待遇の整合性がある 入社後のキャリアイメージがつく 情報が定量的、かつ具体的 募集するストーリーがある 他社との違いが明確 | 仕事内容のイメージがつかない 採用ターゲットが不明確 仕事内容、ポジション、待遇の整合性がない キャリアイメージがつかない 情報が定性、かつ抽象的 募集背景がない or 断片的 他社との違いが不明確 |
① 仕事内容のイメージがつく
悪い例
■ 業務内容
当社サービスのデジタルマーケティング全般を担当いただきます。
具体的にはSEO/リスティング広告/LPの運用改善/CRM体制の構築、等。
業務の内容は分かっても、入社後どういったミッションに取り組むのか、期待される役割や責任など、実際に働く上で必要な情報が書かれていません。
良い例
■ 業務内容
当社では日本国内でtoC向け音楽配信サービスを展開しています。
現在10万人程度のユーザーに利用いただいていますが、早期に30万人までユーザーを増やすことを目標としています。
これまではインフルエンサーを使ったPRによるSNSからの集客がメインでしたが、SEO/DSP広告/DNPなど、複数のチャネルを使ったマーケティング活動を計画しています。
本求人ではSNSマーケティングを除くデジタルマーケティングの予算配分の検討と運用、チャネルごとのROIの策定と改善など、仮説を元にした数字の策定〜運用まで幅広くご担当いただく方を募集します。
なおマーケットシェアを早期に獲得することが第一であり、そのために必要なマーケティング予算は豊富に確保しています。
サービス、事業や組織の状況を転職者が知っていることはありません。
今募集組織ではどんな取り組みをしているのか?募集する方のミッションは何なのか?今後何をする予定なのか?などが具体的に記載されており、候補者が仕事のイメージを持てる内容となっています。
② 採用ターゲットが明確である
悪い例
■ 応募資格
・ 上場企業で決算の経験をお持ちの方
・ リーダー経験をお持ちの方
要件がざっくりして具体性に欠けており、誰もが同じ認識を持てません。
対象外からの応募が増えて工数増につながったり、採用ターゲットに響かず応募を喚起出来ません。
良い例
■ 応募資格
・ 上場企業で連結決算(年次/四半期/月次)取りまとめのご経験をお持ちの方
・ 人数を問わず、若手社員の育成経験をお持ちの方
※ 製造業における原価管理の知見をお持ちの方は歓迎します。
転職者の多くは「自分の経験を活かせる求人なのか」を応募前に確認します。
例えば、リーダーという言葉が何を意味しているのか、人によって認識の齟齬が生まれる表現は不適切です。
リーダー経験とは、マネジメントの立場でメンバーの評価や目標設定も行うのか?若手への業務指導のみで良いのか?受け取る人によって意味が異なります。
③ 仕事内容、ポジション、待遇の整合性
悪い例
■ 求人名:セールスマネジャー候補
■ 業務内容:
セールスチームの管理職候補として、チームとしての売上責任を持つ立場での業務マネジメント、チームマネジメントを行っていただきます。
■ 待遇:500万円〜700万円/月給30~55万
マネジャーとしては待遇面の下限が低く、マネジャー候補というポジションと整合性がありません。
また、年収幅も広く、本当にマネジャー候補なのか不信感を生んでしまいます。
マネジャー人材が応募しない求人になっています。
良い例
■ 求人名:セールスマネジャー候補
■ 業務内容:
当社の商材について理解いただいた後、セールスチームの管理職として、チームとしての売上責任を持つ立場での業務マネジメント、チームマネジメントを行っていただきます。
入社後半年間はチームを持たず、まずはプレーヤーとして業務を行い、商材理解/顧客理解をいただきます。
早ければ、入社半年のタイミングでマネジャー登用予定です。
■ 待遇:
・プレーヤーとしての期間
500万円〜600万円/月給30〜40万円(時間外手当は別途支給)
・マネジャー登用後
600万円〜700万円/月給45万円〜(時間外手当は別途支給)
求人応募時に、想定される待遇やポジションを見ずに応募する方はいません。
今回はポジション、仕事内容、待遇という3点での整合性について取り上げましたが、他にも情報の整合性・一貫性については注意しましょう。
④ 入社後のキャリアイメージがつく
悪い例
■ 求人:知財部門
■ 入社後のキャリア:
本人の適性や志向性を鑑みて決定します。
これでは何も書いていないのと同じです。
自身が希望するキャリアを歩めるのか、どういったキャリアパスがあるのか分からないため、成長意欲が高い人材は応募してくれません。
良い例
■ 求人:知財部門
■ 入社後のキャリア:
当社では半期に1回、目標管理(MBO)とは別に、直属上司とのキャリアに関する面談を実施しています。
知財部門は専門性が高い業務であるがゆえ、約8割の社員は知財部門の中でキャリアを深めることを希望していますが、海外案件の担当を希望する社員が大きいことも特徴です。
実際に現在部内メンバー30名のうち、10名は過去に当社の海外子会社への赴任経験があり、毎年2名程度を目安にローテーションで海外赴任しています。
なお、係争や紛争対応など、法務領域全般まで担当領域を広げたい方であれば、コーポレート法務の戦略法務チームへのキャリアも可能です。
人材大手パーソルキャリアグループが2020年に行った「転職理由・退職理由に関するアンケート調査」によると、転職先を選んだ理由の1位は「成長できる環境だと感じたから」、2位は「経験・スキルが活かせる仕事だと感じたから」となっています。
求人票では、入社後のキャリアステップ、成長イメージを転職者に持たせられるかが重要になります。
採用したい人物像をイメージしながら、自社の具体的な事例や取り組みなど、可能な範囲で求人票に記載しましょう。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000013597.html
⑤ 情報が定量的、かつ具体的
悪い例
■ 働く環境について:
当社では社員一人ひとりが裁量を持って就業しています。
若手からベテラン社員までワークワイフバランスを保って働いています。
主観的な表現で具体性に欠けます。
本当にそうなのか転職者からすると分からないため、信頼に足る情報と思ってもらえません。
良い例
■ 働く環境について:
当社では、働くママさんや副業でインフルエンサー活動を行っている社員など様々なバックグラウンドを持つ社員が就業しています。
働いた時間ではなく業務の成果で評価する評価制度、業務以外に自己研鑽を推奨するカルチャーやバリュー(Keep on Learning)もあるため、下記の通り様々な取り組みを行っています。
<働きやすい環境を作る取り組み>
・ノー残業デー(毎週水曜日)
・フレックス制度(コアタイム:11:00-15:00)
・有給取得推奨キャンペーン(2020年度:有給消化率94%)
・書籍購入補助(月額1万円まで)
結果として全社平均の残業時間は6.8時間です。
「残業が少ない」「ワークライフバランス」「実力主義」など、抽象的な表現を用いた求人票が多く見られますが、具体性が欠けており、どの程度なのか転職者に分かる内容になっておらず転職者にとって魅力になりません。
記載する情報は「定量的」かつ「具体的」であることに努めましょう。
⑥ 募集するストーリーがある
悪い例
■ 採用背景:
事業拡大に伴う増員のため
募集背景は転職者からすると非常に気になる点です。
この事例のような定型文では、応募喚起に繋がりません。
ポジティブな要因である場合は、募集背景自体が競合との差別化や転職者にとっての魅力になる可能性もあります。
良い例
■ 採用背景:
これまで国内を中心にサービス展開を進めてきた背景もあり、海外売上比率は10%程度。かつその半分は中国に依存しています。
中期経営計画でも発表していますが、今後東南アジアへの進出を計画しており、昨年度インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国に現地法人を立ち上げました。
募集部門に所属しているメンバー3名が、今後海外赴任を予定しており、増員で募集することになりました。
2030年までに海外売上比率を30%まで向上させる目標を立てており、積極的な事業投資を行っています。
採用背景は、転職者にとっての魅力や、企業の誠実さが伝わる部分です。ぜひ求人票に記載しましょう。
欠員募集であった場合でも、転職などでの欠員は一般的なことであり、気にせず記載して問題ありません。
新規事業などで公開しにくい理由があるケースもありますが、その場合は募集経路ごとに(広告、自社サイト、転職エージェント、ダイレクトリクルーティングなど)、情報を公開するかどうか適切に判断しましょう。
⑦ 他社との違い(強み・独自性)が明確
事業の競合会社と採用の競合会社は必ずしも同じではありません。
マーケティングの3C(自社(company)/顧客(customer)/競合(competitor))の切り口で、自社・転職者・競合企業を整理して、自社の強みや独自性を明らかにしましょう。
差別化のための分析例
【自社(company)】
・創業100年の大手エネルギー企業
・新卒の人気企業ランキングでは毎年トップ100以内
・新規サービスをグロースさせるメンバーの募集
【ターゲットとなる転職者(Customer)】
・タイプA(スタートアップ):toB向けSaaSを展開するスタートアップ企業のセールスリーダー〜マネジャー
・タイプB(大手):大手企業の新規事業立ち上げを行っている営業企画、またはセールスマネジャー
【競合企業(Competitor)】
・タイプA(スタートアップ):シリーズA〜マザーズ上場クラスのSaaS企業
・タイプB(大手):新規事業の積極的な大手企業の新規事業開発室(例:A社、B社)
<他社との差別化ポイント>
■ 対タイプA(スタートアップ)
・ターゲットとして狙っている法人顧客とは既存事業で取引があり、インバウンドでのコールドコールが不要である
・既存事業での安定収益があるため、事業単体でキャッシュフローの心配がない
・新規事業で0→1の経験は積めつつ、報酬水準は既存事業と変わらない
・既に2桁億円以上の売上規模になっている
■ 対タイプB(大手)
・新規サービスのTOPは外部から採用した執行役員。プロバーでなく外部人材を積極的に登用している。
・基本的な投資判断は執行役員が行い、本社の稟議フローが必要なくスピーディーな意思決定が可能。
・本事業は社長肝いりの事業であり、今後3年間で予定している投資総額は300億円。
・中期経営計画にも盛り込まれており、3年後までしっかりと事業ロードマップが引かれている。
他社との違い(強み・独自性)は、情報量の少ない転職者が応募の検討段階で考えることは難しいため、企業側で準備する必要があります。
求人は無数にあり、自社の差別化ポイントを明確にしなければ、市場で引く手あまたな優秀な人材からは応募が集まりません。
求人票の見直しは、取引エージェントの拡大や、採用チャネルの追加などと異なり、採用予算も採用工数も増やすことなく行えます。
求人票は、採用を効率的、かつ効果的に運用するための重要な鍵になります。
ぜひ自社の求人票を見直してみてください。