主任にとっての課長、課長にとっての部長など、上司は基本的に配下のマネジメントを育成する役割を担っています。
しかし、マネジャー育成の役割は認識しているものの、具体的にどのようなサポートをすべきか明確になっていないケースが少なくありません。
今回は、実例をもとに、優秀なマネジャーを育てる上司が実践している共通のポイントをご紹介します。
リーダー・マネジャーにとって効果的な人材育成手法
人材育成は、人事主導で実施する「研修」と、現場主導で行う「OJT」の二段構えが一般的です。
上司は、OJT(現場での実務経験を通じた育成)により、部下を育成する役割を担っています。
人材育成を考える際、手段として集団研修のような「研修」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
新卒社員など基礎的なビジネススキルを学ぶフェーズは、全員に最低限身につけてもらいたい共通の知識・スキルが多数あります。
集団研修は、各部署で個別に教えるのと比べてはるかに効率的です。
一方、ベテラン社員や、リーダー・マネジャーの育成は、状況が異なります。
担当している業務や役割によって、一人ひとり必要となる能力やスキルが変わり、より複雑な問題を解く力を求められます。
そのため、リーダー・マネジャーの育成は、研修だけではカバーしきれず、OJTによる育成の重要性が増します。
アメリカの調査機関ロミンガー社が、経営者を対象に「何がリーダーとしての成長に役に立ったのか」調査したところ、「経験」が70%、他者からの「薫陶」が20%、「研修」が10%という結果になりました。
この結果からも、日々の業務経験を通じた学びや、上司や他者からの指導・助言といった「OJT」の役割が大きいことがわかります。
では、リーダー・マネジャーの育成のために、上司は具体的に何をすれば良いのでしょうか?
マネトレ利用企業で、リーダー・マネジャーに良い影響を与えた上司に共通する3つの行動をご紹介します。
①状況確認の「声かけ」で関心を示す
上司からの声かけは、マネジャーにとって動機づけになります。
逆に、状況確認されない、声かけされないのは、「無関心」「重要ではない」とメッセージを発していることになるため注意が必要です。
以下のように、一言声をかけるだけでも関心があることが伝わり、マネジャーの行動促進に繋がります。
- 未回答のメンバーとはコミュニケーション取れてる?
- アンケートの趣旨はきちんと説明できてる?
- アンケート結果はどうだった?
- 今の組織の課題は何?
- 課題解決のために、具体的に何をしていく?
- 計画は実行できてる?
- 実行してみてどんな反応だった?
②結果だけでなく計画に対しても「フィードバック」する
計画設定時のフィードバックと、実行後のフィードバックは、役割が異なります。
実行後の結果に対してフィードバックしているという方は多いと思います。
実行後のフィードバックは、評価の性質を持ちます。良い行動や成果の承認・称賛により、やりがいやモチベーションを高める効果があります。
計画設定時のフィードバックは、計画自体の質を高め、実行への動機づけを行い、その後の成果自体を高める効果があります。
また、マネジャーの目標設定力は、その部下の目標設定をレビューする能力に直結します。
マネジャーの目標設定力が低ければ、組織全体の目標設定力も低くなるため、軽視できません。
同じマネジャーという職位でも、過去の上司からどのような指導を受けたかにより、目標設定力は大きく異なります。
上司は実行後だけでなく、計画設定の段階でもフィードバックを行いましょう。
- 原因と解決策がずれてない?
- もう少し具体的な行動に落とし込もう/それって具体的にはどんな行動?
- いつまでにやる?/どのくらいの頻度でやる?
- 〜〜というアクションも追加しよう
- ●●の資料が役立つので活用してみて
- ○○の項目は高めていきたいね!
- ○○のアクションいいね、さっそく実行していこう!
③配下組織の状態を把握し、課題解決をサポートする
メンバーのマネジメントをマネジャーに任せるというのは、全てを一任することではありません。
直接マネジメントをマネジャーに委任し、上司自身はマネジャーを通して間接マネジメントを発揮するのが正しい姿です。
マネジャーは、忙しく時間がない、権限が足りない、ノウハウがない、など様々な理由で、上司が期待するレベルのマネジメントができないことが多くあります。
ただ任せるだけでは、組織全体のマネジメントはうまくいきません。
マネジャーを通じた間接マネジメントを機能させるには、配下組織ごとの状態をきちんと把握し、各マネジャーが発生している組織課題に取り組むよう促すことが欠かせません。
また、配下組織ごとの状態を把握すると、部のような組織全体で共通する課題が見えてきます。
こうした共通課題は、組織の構造的な問題や、組織風土、慣習など、マネジャーの課題ではなく組織全体の課題であることがほとんどです。
- 次世代マネジャーの育成が進まず、1人のマネジャーに10名以上の直接マネジメントを任せている
- 厳しい上司の下で育ったことから、承認・称賛が少ない組織風土になってしまっている
- 人間関係の問題を軽視する風潮があり、関係が悪いことを前提とした歪な業務フローが生産性を落としている
- 目標設定に対するレビューをきちんとせず適当に運用してきたことで、組織全体で目標設定力が低い
こうした組織共通の課題は、マネジャーではなく、上司がオーナーシップを持ち取り組むべき課題です。
上司が率先して組織の共通課題の解決に取り組む姿勢を見せることで、上司に対するマネジャーやメンバーの信頼は高まります。
課題の内容によっては、解決に時間を要したり、解決が難しいこともあると思います。
たとえ解決できなかったとしても、課題を解決しようとする姿勢は、マネジャーやメンバーにとって好意的に映ります。
上司の活動は部下からは見えづらく、実際は行動しているのに、部下から上司は何もしていないと思われている場合があります。
課題意識を持っていることや、改善に取り組んでいることを伝える。
取り組むのが難しいことは、判断とその理由を伝える。
改善に時間がかかるものは、途中経過やいつ頃実現できそうか伝える。
このように、マネジャーやメンバーに対して、自身の活動をきちんと「伝える」ことを忘れないようにしましょう。
マネジャーの成長には上司の関与が欠かせない
上司からのマネジャーへの関わりは、マネジャーの動機づけや成長にとって大きな意味を持ちます。
たとえば、上記「①状況確認の声かけで関心を示す」「②結果だけでなく計画に対してもフィードバックする」は、時間にして3~5分程度の短いコミュニケーションですが、やるかやらないかで大きな差が生まれます。
ぜひ実践してみてください。