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怒りの感情のコントロールはマネジメントする上では必須のスキルです。部下に対して発露する怒りは、パワハラになるリスクが極めて高い行為でもあります。
一方で、旧来の日本型マネジメントは、怒りを部下にぶつけることを問題としてこなかったため、管理職自身はそういった怒りをぶつけられて育った人であり、自身の怒りのマネジメントが下手な傾向にあります。
上司が嫌だったらすぐ辞めてしまう欧米と比べ、転職が一般的でなかった日本独特の雇用慣行、文化的な背景から、長年放置されてきた側面も大きいでしょう。

転職支援サービス最大手のリクナビネクストによると、転職者の本音の転職理由の第1位は上司です。2位の労働時間・環境、3位の同僚との人間関係と比べても倍近い数値で、いかにメンバーにとって上司が重要かが分かります。職場環境の改善より、上司のマネジメントを改善した方が離職には効果がありそうです。
※参考:https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/

怒りのマネジメントが下手な上司で、メンバーから信頼を得ていることはまずありません(本人はその自覚がないことが多いですが)。
今回は、マネジャーにとっての必須スキル「アンガーマネジメント」について解説します。

目次

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、怒りやイライラといった「怒りの感情をコントロールすること」です。
1970年代のアメリカで生まれ、怒りの感情と上手に付き合うための方法として広く普及しました。

アンガーマネジメントは、怒りを無理に抑えつけたり我慢したりすることではありません。何でもかんでも怒らないこと、怒らない努力ではありません。怒りという感情を取り除く必要はなく、それは誰もが持っているものです。
怒らなくなることではなく、怒りの感情を認識し、怒る必要がある部分で上手に怒り、怒る必要がないときには怒らないようになる。
すなわち、怒りを適切に切り分けることによって、怒りをコントロールすることがアンガーマネジメントです。

ただし、職場における怒りは、パワハラやモラハラといったハラスメントと極めて受け取られやすい行為ですので注意が必要です。
ハラスメントは、行為者がどう思っているのかは関係なく、相手が不快な感情を抱けばハラスメントになります。したがって、本人の意図とは異なっても、怒りの感情からパワハラ・モラハラを招いてしまう危険性があります。
 (参考)ハラスメントとは?|職場におけるハラスメントの実態

アンガーマネジメントは、人間関係や仕事の生産性にもポジティブな影響を与えます。そのため、企業の管理職研修や、夫婦セラピーやカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングに利用され、言葉として広く知られています。

怒りのメカニズム

そもそもなぜ人は怒ってしまうのでしょうか。
アンガーマネジメントでは、怒りの感情は二次感情と言われます。つまり、怒りの感情というのは単体では存在しない感情とされます。
一次感情と言われるものは、怒りという感情が湧き出す前の「不安、嫌だ、寂しい、悲しい、つらい」といったネガティブな感情です。

  • 一次感情:苛立ち、不安、寂しい、悲しい、つらい、心配、苦しい、疲れた、など
  • 二次感情:怒り

一次感情が許容範囲を超えてしまうと、二次感情の怒りという形で発散しようとします。
分かりやすく言い換えると、コップに一次感情を注いでいくと、溢れて二次感情の怒りに変わるというわけです。
コップの大きさは人それぞれなので、コップが小さい人はしょっちゅう怒っています。逆にコップが大きい人は怒りにくいです。

また、このコップには睡眠が大きく関係しているとされており、基本的によい睡眠がとれればコップの水は減ります。朝からすごいイライラするという日は、朝からコップに水が溜まっている状態です。
健康は感情をコントロールする上でとても重要とされます。怒りっぽい人は、きちんと睡眠を取るように心がけましょう。

怒り方の癖/アンガーマネジメント診断

人の怒りには傾向(癖)があり、以下の6つに分けることができます。怒りの癖は決して悪いことではありません。この6つの項目は全ての人が持っており、人によって強弱があります。
怒り方の癖は、結婚や転職といったライフイベントや、忙しい、ストレスが高いといった環境等でも変化し、固定化されたものではありません。その時々によって強く出たり、弱く出たり、と変化します。

自分がどんなことにイライラしたり怒ったりするのかという怒りの癖が分かると、自分自身や他者と上手に付き合う上で役に立ちます。
 

① 公明正大タイプ
自分が正しいと思うことや、正義といった信念を押し通すタイプです。使命感に燃え、信じることに脇目もふらず突き進んでいく性質を持っています。
  
② 博学多才タイプ
何事にも白黒つけたがる傾向があります。好き嫌い、敵味方、良い悪いなどどちらか極端にものごとを考えるタイプです。また完璧主義でもあり、自分が納得しないと始められない、終われないという特徴も持っています。
 
③ 天真爛漫タイプ
思ったことを思った通りに発言して行動するタイプです。自分の主張を素直に表現して行動できる人で、統率力に長けています。強いリーダーシップを発揮することができるでしょう。
 
④ 外柔内剛タイプ
表面は穏やかに見られることが多いのですが、内には確固たる揺るがない自分を持っています。一度決めたことは誰に言われても譲らない強さを持った人です。
 
⑤ 威風堂々タイプ
自分に自信を持っています。自分を自分自身で評価することができ、自分を信じて前向きに進む力が高い人です。
 
⑥ 用心堅固タイプ
心を開きにくく人を簡単に信用しないので、スムーズに人間関係をつくれないことがあります。逆に誰とでもある程度の距離をとって接するため、八方美人と思われます。

より詳細を知りたい方は、下記日本アンガーマネジメント協会のサイトより無料で診断をすることができます。
参考:無料アンガーマネジメント診断 https://www.angermanagement.co.jp/test

自分の怒りに対処する方法|アンガーマネジメント①

誰もがイライラしたくないと思うし、怒りたくはないと思っていますが、「怒り」という感情を取り除くとか、怒るのをやめよう、とは考えないでください。怒りという感情自体を取り除くことは絶対にできません。
自分の怒りをマネジメントするためには、次の4つを意識してコントロールしていくことが重要になります。

① 衝動

6秒ルールという言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
怒りに対しては、「反射をしない」というのが非常に重要になります。
怒りのピークといわれる最初の6秒間を乗り切ることができれば、衝動的な言動や行動を抑えられるとされます。
イラっとしたら自分の中で6秒数え待ちましょう。今よりはうまく怒りの感情と付き合えるようになるはずです。

② 思考

「するべき」、「こうあるべき」という思考を捨てましょう。
人は自分が信じている「~すべき」「~すべきでない」が目の前で裏切られたとき怒ります。例えば、「仕事はこうするべき」と思っていて、部下が仕事をそうしなかったら腹が立ちます。本当の怒る原因は、「誰か」や「出来事」という自分の外にあるもの自体にあるのではなく、全部自分の中にあります。自分の中にあるからコントロールが可能です。
人はそれぞれ自分の価値観が異なります。
その価値観の違いを理解した上で、自分の価値観だけに狭めず、自分の「〜すべき」を広げる、他の「〜すべき」を許容していくことで、必要以上に怒りを感じることがなくなります。

③ 行動

自分でコントロールできることのみに注力することが重要です。自分の行動によって変えられないものに怒りの感情を持ってもただイライラするだけで無駄なエネルギーになってしまいます。
自分でコントロールできることのみに目を向け、自分でコントロールできないことに対してはエネルギーを振り向けないことが重要です。

④ 言語能力

言葉の能力の高い人は、怒りの感情のコントロールがうまく、逆に言語能力の低い人は、怒りの感情のコントロールが苦手とされます。そのため、言語能力がまだ低い子供は感情のコントロールが苦手です。
言語能力が低い人は、怒りの感情を言語(表現)として言い表せないため、強弱で怒りを表します。机を叩く、怒鳴るなどです。言葉で表現できないため、ボリュームで強弱をつけようとするのです。
言葉で表現できるようになれば、自分を客観視することができ、怒りを抑えることができます。言葉は理性です。怒りっぽい人は、言葉を増やす努力が必要です。

他人の怒りに対処する方法|アンガーマネジメント②

怒っている人と向き合う際は、怒る前に感じていた第一次感情に目を向けます。
怒りは二次感情ですので、怒りそのものに目を向けても原因の解決が出来ません。
怒りそのものに目を向けるのではなく、その人が怒りの前に感じていた一次感情を想像します。
苦しいから怒っているのか、不安だから起こっているのか、納得できないから怒っているのか。何を感じたから怒ったのか、怒る前に何を感じていたのか考えます。
それを理解すると、怒っている人から、あなたに対する安心感や信頼感が上がります。
怒ることは一次感情を溢れさせているわけですから、一次感情に目を向けその解消を行いましょう。

怒りは万能感情とも呼ばれ、人は悲しいとか、辛いとなった時に、怒ることによって他の感情をごまかしたり、忘れてたりことができます。
万能感情に頼りすぎてしまい、どんなことを感じてもすぐ怒りに転化することが癖になっている人も少なからず存在します。 そうしたものなんだと理解し、冷静に対処しましょう。

アンガーマネジメントのメリット/職場において

アンガーマネジメントを身につけ怒りの感情をコントロールできるようになることで、職場において下記のようなメリットがあります。

  • 自分の気持ちを相手が受け入れやすい形で表現できる
  • 怒りを感じる頻度が減ることで、ストレスが減少する
  • 仕事の生産性が上がる
  • ハラスメントのリスクが減少する
  • 意思伝達がスムーズになり、コミュニケーションが円滑になる
  • 怒ること以外の適切な解決策を見つけることで、部下への教育や指導の質が向上する

アンガーマネジメントが求められる背景/必要性

今、アンガーマネジメントが求められる背景に、価値観の多様化や働き方改革があります。
人は価値観やライフスタイルが異なるのは当たり前になり、それを認め合おうとする社会へと変わってきています。テクノロジーの急激な進歩やグローバル化の流れもあり、世代間での価値観や考え方は大きく異っています。
また、社会全体がパワハラやセクハラなどのハラスメント防止に力を入れ始めたこともあります。
実際、部下のマネジメントに悩む管理職が増えています。
今管理職の人の多くは、自分が新人時代に先輩や上司から教育を受けてきたのと同じように叱ると、本人は教育のつもりでも部下や周りからパワハラと言われてしまいます。
当時先輩や上司から自分が教わった方法や価値観が通じなくなってきているのです。

アンガーマネジメントによって自分の怒りの感情に気づけるようになり、怒りの感情をうまくコントロール出来るようになれば、不要な怒りはなくなります。
仮に怒る必要がある場合にも、自分の気持ちや考えを適切な言葉で部下(相手)に伝えられるようになることで、職場でもプライベートにおいてもより良い人間関係を築けるようになるはずです。

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