「任せられた仕事はするが発言や態度に問題があり、チームに悪影響を与えている社員がいるがどうすればよいか?」多くの管理職が一度は直面したことがある悩みではないでしょうか。
今回は、実際にあった相談をもとに問題社員への対処法について解説します。
自分の仕事はするが周囲へ悪影響を与える部下
マネジメントで悩んでいる社員がいてご相談です。
プレイヤーとしてある程度自走力、責任感をもって業務にあたる点は貴重ではあるのですが、自己中心的な言動から、チームへの悪影響が目立っています。
具体的には下記のような態度です。
・短慮、否定的な発言、行動による周囲との軋轢
・他のメンバーに対する攻撃的な言動
・キャラクターが固定化しており開き直っていて、他者の意見を受け入れない
・自分の価値観に照らして不要と判断したものは無視する(定期的な1on1、チームの決め事、注意や指摘)
・上司からの指摘に対して、表面的には従う素振りを見せるが実際は従わない
管理職としてどのように対処していけば良いでしょうか?
日本ではクビにできないからどうしようもない。
そのように思い半ばあきらめている管理職も多いかと思います。
当の社員も、どうせクビにはならないと高をくくっているのかもしれません。
しかし、問題社員がいた場合に、その人が周りに与える悪影響は無視できません。
問題社員の発言はメンバーの士気を下げ、不満に繋がります。
たとえ問題社員が変わろうとしなくても、上司はそれを放置してはいけません。
では、どうやって問題社員に対応すれば良いのでしょうか?
大前提|勤務態度についても上司は是正を求めて良い
今回の相談のような問題社員の振る舞いは、会社としての価値観や社員に求める「コンピテンシー(行動特性)」に反した言動でしょう。
多くの会社では、社員に求める姿勢・マインド、組織貢献といった内容が、評価制度などで設定・明文化されているはずです。
※コンピテンシー(行動特性)を設定していない企業は設定しましょう。
コンピテンシーに反した言動を会社として認めず、是正を求めることは何ら問題ありません。
つまり、仕事をしているからといって、悪態をついたり、自己中心的な振る舞いで周囲に迷惑をかけることは許容しなくて良いのです。
是正を促しても従わない場合は、降格も含めたドラスティックな評価の運用などは合理的と認められます。
問題社員への対処法|8つのステップ
① 本人が真剣に捉えざるを得ない場を設定する
真剣に取り合わない人に対して、問題と向き合わせるのは非常に難しい行為です。
今回のケースのように、既に上司から何度も問題社員に指摘している現状を鑑みると、通常の指導の中でこれを打開するのは困難です。
当の本人がプレッシャーを感じるレベルの、上司も含めた真剣なミーティングの場を設定し、本人が逃げられない(向き合わざるを得ない)状況を作りましょう。
問題社員がミーティングを避けようとする可能性もありますが、内容を明示し業務に関する指示であれば(業務命令と認識させる)、従業員は業務指示として原則従う義務があります。
リスケジュールなどを繰り返すようであれば、業務命令違反であり懲戒事案にあたります(それを理由に降格や解雇が可能)ので、記録を残しておきましょう。
② ミーティング内容について上司に事前に共有し合意を得る
「何について是正を求めるのか」「その事柄についてのあなたの判断は、会社としても(上長としても)同じか」確認しておく必要があります。
③ ミーティングでの役割を決める
問題社員の直属の上司がメインで話し、それをさらに上長がサポートする形が最も話しやすいと思います。
そうした役割分担も、事前に上司と相談しましょう。
④ 相手が主張するであろう内容に対する反論を準備しておく
問題社員が主張するであろう内容に関しては、事前に洗い出し、反論を準備しておきましょう。
シミュレーションはミーティングの主導権を管理職サイドが持って進行するために重要です。
⑤ ミーティングではまずは相手の主張を聞き出す
問題だと思っている言動に関して、どうしてそのようなことをするのか、問題社員の主張を聞き出しましょう。
そして、問い(どうして?なぜ?)で深堀りしましょう。
問題社員の考えは、たいてい論理や根拠に欠け、正当性がありません。
それゆえに、本人に話させることで、話すうちに自身の言動がまずい行動であることを認識していきます。
決して問題社員を詰めてはいけません。
主張を聞き出すタイミングでそうした厳しい対応をしてしまうと、本人は黙ってしまい、対話を拒否されてしまいます。
分かってないのに「分かりました、もういいですか」となるのがオチです。
問題社員に対して、聴くスタンスを忘れずに、主張を聞き出します。
業務内のミーティングでの指示ですので、質問への回答を求めることはなんら問題ありません。
質問への回答からは逃さないようにしましょう。
⑥ 厳しく改善を促すタイミング
はじめから厳しく改善を指摘すると、本人は押し黙ってしまってしまい、一方的なこちらの主張で終わってしまいます。
問題社員に、問題行動を認識し、改善してもらうという本来の目的を達成できません。
必ず、本人の主張を聞き終わった後で、改善を求めましょう。
⑦ 感情的にならないよう注意する
感情的になり怒鳴ったり、人格否定をするような発言など、パワハラ行為は絶対にやめましょう。
相手に録音される可能性もあります。
録音されていても問題のないよう、冒頭のべた相手の主張も聞くミーティングの進め方をし、感情的にならずに淡々と行いましょう。
また、ミーティング主催者として、ミーティングを録音しておくことをおすすめします。
相手が録音し、一部を切り出してパワハラを訴える可能性があるためです。
ミーティング全体の録音を持っていれば、何かあっても自分たちの正当性を示すことができます。
⑧ 会社として認められないことを結果で示す
これまで述べたようなステップを踏んだ上で、それでも改善が見られないようであれば、降格や減給といった厳しい対応を行いましょう。
ここまでくれば、無視しても大丈夫と高をくくっていた問題社員も、合理的に考えて態度を改める方が良いと考えるはずです。
これまで口頭で注意してきたけれど、問題社員からの反発を恐れて、実際の厳しい対応はしてこなかった方が多いと思います。
しかし、問題社員を放置することの方が、はるかに組織全体にマイナス影響があります。
また、問題社員の放置は、間違った組織文化の形成にも繋がりかねません。
今回ご紹介したようなきちんとしたステップを踏んでいれば、評価や降格などの対応は合理的であり法的にも認められます。
上司への相談はもちろん必要ですが、厳しい結果を突きつけても問題はありません。
問題社員がいた場合に、その人が周りに与える悪影響は無視できません。
きちんとしたステップを踏み、上司として強い態度で問題社員に是正を促していきましょう。
管理職が問題社員の言動を認めない姿勢を示し続けることは(一貫性のある態度)、他のメンバーからの管理職への信頼に大きく影響します。
問題社員を放置せず、会社の価値観やコンピテンシーに反する言動は認めない姿勢を、管理職は貫かねばなりません。