マネジャーが何より持っていなければならない「信頼」
さまざまなマネジメント手法や、コーチングといったスキルに注目が集まりがちですが、マネジャーにとって何よりも重要な要素・土台は、「信頼」です。
メンバーからの信頼がなければ、どんなマネジメントテクニックも有効に機能しません。
では、マネジメントにおける信頼とはどのように発生し、どうやって高めていけばいいのでしょうか?
信頼とは?|マネジャーに必要な信頼関係
辞書によると、信頼とは「信じて頼りにすること。頼りになると信じること」と記載があります。心理学的に言えば、上記のような心理的状態がそれに当たります。
マネジャーは、自らの存在を通じて、メンバーをエンパワーメントし、自身がいなくとも周囲に影響を与え、組織をより良いものとし、目標達成に導くことが求めれます。
メンバーがそれぞれの素質や能力を発揮できるように体制を整える。
そのための、土台が信頼です。
昔から不在時にこそリーダーとしての真価が問われると言われますが、昨今のコロナウィルスにより物理的な不在が生じ、組織における信頼レベルが浮き彫りになりました。
サーベイ結果とマネジャーの自己認知との差として、職場の人間関係や、メンバー間の信頼関係の低下を挙げる組織が増えたように感じます。
信頼を構築するにはどうしたらよいか?|信頼を構成する要素
信頼には「オーセンティシティ」「ロジック」「共感」という3つのドライバーがあります。
人が相手を信頼するのは、相手が嘘偽りのない本心で接してくれている(オーセンティシティ)と考え、相手の判断や能力(ロジック)を信じ、相手が自分のことを気遣ってくれている(共感)と思った時です。
マネジャーは意識して、このトライアングルを保つ、メンテナンスすることが求められます。
逆に、信頼が損なわれた時は、この3つのどれかがぐらついていると言えます。
チームのメンバー間で信頼が築けていない、自身がメンバーと信頼関係が築けていないという場合は、信頼を揺るがしている部分はどこなのかを突き止め、改善のための行動を起こすことが重要です。
誰しもが得意、不得意な部分があると言われており、たいてい同じドライバーが信頼を揺るがす原因となります。自分自身が弱い部分を認識しておくと良いでしょう。
マネジャーが陥りがちなパターン|誰しもが弱い部分を持っている
高業績のマネジャーは、共感のドライバーが低い傾向があります。共感が揺らぐのは、分析力に優れ、学びに対する意欲が強い人の共通の課題です。
そうした人たちは意欲を持っていない、理解するのに時間がかかる人にいらだつことが多いです。チームの中で自身がどのように振る舞っているのか、それを見たメンバーはどう感じるのか、自分の利益を優先していると思われていないか、考えてみましょう。
論理が通っていなかったり、自分の考えの背景を説明できない、していないマネジャーは、ロジックのドライバーが低い傾向があります。
ロジックはあるのに、考えの背景を説明していないマネジャーが多いのが実情です。ロジックが揺らいでいる時の実態は、論理的思考力が欠けていることではなく、そういう風にメンバーからは見えてしまっている(ロジックが伝わっていない)ことが原因です。
判断力を信じられない、判断の背景が分からないのに、メンバーはマネジャーの判断を信頼して従いたいとは思いません。
ロジックの共有が疎かになっていないか、ただの指示命令だけになっていないか、振り返ってみましょう。
周囲にマネジャーの本当の人柄が分からない、本心が分からないと思われている場合は、オーセンティシティ(相手が嘘偽りのない本心で接してくれている)に問題があります。
仕事をしている時と飲み会での言動が異なる(部下は業務外でのあなたの行動も見ています)といった単純なことから、職場ではまったく別の人格として働いているため、本音が見えないといったケースもあります。
本来の自分を出すのは難しいという意見もあるでしょう。しかし、真実を隠している、演じていると思われると、リーダーとしての信頼や統率力を制限することになってしまいます。
また、オーセンティシティを発揮できる環境は、マネジャーだけでなく、メンバー誰もが活躍できる可能性が高くなります。
マネジメントの前提は信頼関係を築くことである
いかがでしたでしょうか?
信頼が重要と思っている人は多くても、信頼を漠然と捉えていて、信頼そのものや、信頼の築き方について感覚的な方がほとんどかと思います。
信頼関係はマネジメントの土台です。ここを飛び越えてマネジメントはできません。
ぜひ今回の内容を参考に、自分はどこが弱いタイプのマネジャーなのか、どういった点に気をつけて日々メンバーと接していけばいいのか、メンバーとの信頼関係を築いていくために考えてみてください。
参考:『Begin with Trust』HBR,May-Jun 2020 Frances Frei/Anne Morriss