OKRとは?
「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略称で、 組織が掲げる目標を達成するため、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)をリンクさせ、組織・個人の方向性の統一などを目的とした目標管理方法の一つです。
米半導体大手のインテルで誕生し、GoogleやFacebookといったシリコンバレーのIT企業が活用している事などを背景に、日本でもメルカリやfreeeといったスタートアップ企業を中心に導入されています。
日本企業の大半で使われている、ピーター・ドラッカーが提唱したMBO(目標管理制度)とは異なる、比較的新しい目標管理方法です。
OKRの設定には決まったルールはなく、柔軟な設定が可能ですが、ガイドラインがあります。今回はOKRの内容とガイドラインを紹介します。
OKRの特徴とガイドライン
OKRの特徴は、「企業の目標」「所属組織の目標」「個人の目標」をリンクさせており、企業の目標(Object)と個人の目標(Object)の方向性が一致していること。進捗管理を毎週行い、目標設定も毎月や四半期と高い頻度で振り返り柔軟に見直すこと。OKRは目標管理には用いますが、そのまま評価には使わないことです。
従来のMBOでは、会社の目標や組織の目標に関係なく、個人が個人で考えて目標を立てるため、会社や組織の目標と個人の目標は必ずしも一致していませんでした。また、期間中の目標の見直しは行わず、進捗確認・評価に関する振り返りを行うまでの期間は、半期や1年ごとと、非常に間隔が長いものでした。目標管理としてだけでなく、その達成度合いで評価にも反映されます。
目標設定が組織から個人に紐づいている
まず会社全体のOKRが決まり、それに基づいてその下の事業部門のOKR、次にさらに下のチームのOKR、最終的に個人のOKRまで細分化され設定されます。
達成度は60~70%で成功とする
MBOでは達成度100%を目指す目標を立てますが、OKRでは、達成度が100%にならない60%~70%の達成率になるような、「難しいが不可能ではない」ストレッチした目標を立てるのが良いとされています。
1つの目標につき、成果指標を3個ほど設定します。目標は定性的で構いませんが、具体的で誰もが理解できるものとし、結果(Key Result)は数値化できる定量的なものとし、簡単に評価できるようにします。
フィードバックのタイミングが短い
目標(Object)を設定し、1カ月に一度、あるいは四半期に一度といったタイミングでフィードバックを行ます。その時々の状況で目標自体も柔軟に変更を行います。
また、設定した成果(Key Result)に対する進捗管理は毎週行います。1on1などを通して、どのぐらい達成したか、プロセスはどのくらい進んでいるか確認し、都度フィードバックを行います。
評価にOKRをそのまま用いない
OKRを従業員の評価にそのままは用いません。OKRはあくまでも組織の成長、プロジェクトの管理のための目標管理制度として利用します。
理由は、OKRを評価制度としてしまうと、高いレベルでの目標設定ができなくなり、社員が簡単に達成できる目標ばかりを設定するようになるためです。逆に野心的な目標を掲げたが故に、あまり進捗が芳しくない場合、その人は自分の評価が低いと不公平感持つことになってしまいます。
OKRの導入企業の実態としては、OKRは組織が決めた目標なので、人事評価と関連しないわけではありませんが、OKRは評価制度と切り離し、別の評価制度を導入する。OKRを定量評価のベースとするものの、定性評価は別で行うといった形で、OKR自体を評価制度とはせず運用されています。
OKR導入によるメリット・効果
生産性向上
OKRでは、公開された目標を全社員で共有し、目標達成度指標(Key Results)を意識しながら、日々の業務に取り組みます。目標に対する優先事項を明確になるため、日々の業務で目標から外れている無駄やコストを省くことに繋がり、生産性が向上します。
メンバー同士のチームワークの向上
社員ひとり一人の目標と結果が共有されるため、チームや個人間の意思疎通を容易にする効果があり、結果としてコミュニケーションを活性化させ全社的な相互連携を生むことに繋がり、社員同士のコミュニケーションを促進します。また、同じ課題感を持っていたり、同じ取り組みをしている同僚が分かり、周囲からのサポートやアイデアが生まれやすくなります。
個人と組織の整合性
OKRでは、会社や組織の目標に紐付いて自分の目標を設定するため、一人ひとりが会社や組織の目標を理解し、どのような行動・成果を期待されているかを理解することで、「社員の向かう方向を一致させ、企業と社員の信頼関係が深まる」といった効果が期待できます。
また、組織の目標と従業員の個人目標を連動させるため、個人が自社にどのように貢献しているかが可視化されやすく、従業員の企業や組織に対する貢献意欲を高められます。
さらに、MBOとは異なり、月1回から四半期に一度の振り返りが実施され、従業員は企業に対する貢献度や業務の納得度を都度確認できるので、従来の目標管理方法と比べても相互的な信頼関係を強化できます。
目標達成率の向上や大きな目標設定が可能
企業として大きな目標を達成しやすくなるという効果も期待できます。OKRでは、目標達成の期待水準が60~70%が良いとされており、もともとの目標が高く設定されています(期待水準100%達成の目標がダメな訳ではない)。
目標の難易度の高さは「企業」「チーム」「個人」全てのOKRで共通しているため、OKRを実施することにより組織全体で高い目標を追い掛けることができ、その結果、期待以上の成果に到達しやすくなるというメリットが期待できます。
OKRとMBO・KPIの違い
OKR以外の目標管理ツールとして、MBO(Management By Objectives(目標による管理))やKPI(Key Performance Indicator(重要業績評価指標))があります。
MBO(Management By Objectives(目標による管理))
日本企業の多くで以前より使われてきたMBOは、より「評価制度」としての意味合いが強いものです。MBOは報酬の決定にも使われ、定量的・定性的ともに考慮します。目標設定の頻度や進捗管理は、半年〜1年に1回と長いです。
会社や組織といった指揮命令系統によるマネジメントではなく、本人の自主性や自己統制に基づいて目標を設定・達成する点に、大きな特長があります。本人が自分で目標設定を行うため、MBOでは会社や組織の目標と個人の目標は必ずしも連動しません。
KPI(Key Performance Indicator(重要業績評価指標))
KPIは、最終目標(KGI)達成にいたるまでのプロセスをチェックする中間指標です。KPIを達成することで最終目標が達成される設計となっているため、100%以上の達成が求められます。
導入の背景
ビジネス状況の変化が激しく、マネジメントもそれに対応する必要がある
ビジネス環境の変化のスピードは早く、それに対して企業も柔軟に変化する必要があります。その結果、マネジメントも以前より早いスピードで変化に対応していかなければならなくなりました。そのような背景から、現場では半年前に設定した目標や成果は意味が無くなるということも頻繁に起こるようになりました。
OKRなら従業員と企業の目標のすり合わせや、方向性の統一をした上でビジョン(目標)とミッション(タスク)を柔軟に変化させることができます。
組織の目標が変化した場合、組織・個人の目標と結果も連動して変更可能となります。変化が激しい時代において、その時々の状況に応じて柔軟に目標設定を見直し、タイムリーなフィードバックでメンバーとのズレを修正し、納得感を持って働いてもらうことが可能になる方法なのです。
皆が共通のビジョンに向かって走る必要があり、変化が激しいスタートアップ企業でOKRの導入が相次ぐのは、非常に理に適っているといえます。