現代の職場環境では、年功序列の崩壊とともに、年上の部下を持つ管理職が増加しています。
このような状況で、多くの管理職が「年上部下のマネジメントに困っている」「年上部下が言うことを聞かない」といった課題に直面しています。
本コラムでは、年上部下との効果的な接し方やマネジメントのポイントについて具体的に解説します。
年上部下のマネジメントが難しい理由
年上部下のマネジメントが難しい理由は、以下の3つに分けられます。
1.会社の制度
年上部下は昇進の機会が限られているため、仕事に対するモチベーションが低下しやすいです。
2.日本特有の解雇規制
日本では社員の解雇が難しいため、年上部下が会社に貢献しなくても居続けられます。
3.文化的背景
日本の儒教文化は年齢による上下関係を重視するため、年上部下が年下上司の言うことを聞かないことが多いです。
年上部下との接し方の基本
年上部下のマネジメントでは、「立場は上だが、人生経験は下である」というスタンスが重要です。
上司としての立場を示しつつ、先輩を敬う姿勢を見せるバランスを保ちましょう。
年上部下に舐められてはいけないと、上から感を出してしまうのはNGです。
年上部下への指示の出し方
年上部下は経験と自信があるので、自由を行使しがちです。
明確に指示を出さないと、マネジャーの認識とズレたアウトプットになることがよくあります。
ゴールは明確に示しましょう。
年上部下は経験と自信があるため、明確な指示が必要です。
ゴールを明確に示し、相手のレベルに応じて指示の方法を調整しましょう。
また、「何を(What)」「どのように(How)」「いつまでに(When)」を明確にして指示することが重要です。
年上部下が上司を舐めている場合、指示であることを明確に伝えないと、依頼した仕事が対応されないことがあります。
お願いや相談だと思われると無視されることがあるため、「何を(What)」「どのように(How)」「いつまでに(When)」を明確にし、業務依頼だとハッキリ分かる形で指示しましょう。
年上部下のマネジメントの注意点
年上部下にはコーチングアプローチが効果的です。
問いを使って導けば、上から感を出さずに(指示や命令感を出さずに)導くことができます。
何が問題だと思いますか?(原因)
どうしたらよいと思いますか?(解決策)
どうやって進めていくべきでしょうか?(具体化)
しかし、上司の判断力や能力が認められていないと年上部下に対するコーチングは機能しません。
まずは自身の考えや判断を示し、年上部下からの信任を得ることが必要です。
年上部下から認められていない状態で、年下上司が報告や相談に対し「どうすべきと思いますか?」のように問いかけると、「能力がない」「指示・判断ができない」「上司の責任を放棄している」といった、無能のレッテルを貼られかねないので注意しましょう。
対応策としては、まず自分の考えや判断を示すようにすることが有効です。
「私はこう考えていますが、◯◯さんは思いますか?」のように自身の考えや判断を示した上で、相手に意見を求めます。
自分の判断能力や業務スキルを、相手に示すよう心がけてください。
年上部下からの報告、相談の受け方
年下上司に報告や相談をするのは、年上部下からすると心理的に嫌な行為です。
報告とは上に対してするものという潜在意識があるため、年上部下を放っておくと報告や相談は敬遠されます。
年上部下に対しては、報告や相談のタイミングを明示し、相手の予定表に組み込むことで対応しましょう。
年上部下を褒める際の注意点
年上部下は年下上司から褒められることに複雑な感情を持つため、感謝の言葉を用いて評価しましょう。
例えば「○○さんは仕事が正確ですね」「○○さんは仕事が早いですね」といった形で褒めると、相手は評価されている感を感じてしまいます。
「仕事が早くて助かりました、ありがとうございます」
「仕事が正確で効率的に進めることが出来ました、ありがとうございます」
こうした、アウトプットに対する事実(良かった結果)と、感謝を組み合わせると、上司から評価されている感が出ず、年上部下は、年下上司の言葉を素直に受け取ることができるので効果的です。
年上部下の目標設定と評価のコツ
年上部下は、これ以上のアップサイドが見えないことで、新たな仕事は避けたいという心理になりがちです。
そのため、本人に目標設定を任せると、低い目標を設定しようとする傾向があります。
年上部下には、具体的な数字で目標を設定し、会社の基準に基づいて客観的に評価することが重要です。
目標は抽象的な言葉でなく、具体的な数字で計測できる形に落とし込みましょう。
チームへ悪影響を与える年上部下への対処法
チームに悪影響を与える年上部下には、オープンな場で意見を引き出し、上司としてきちんと回答することが有効です。
「年上部下が、自分(年下上司)の悪口を言っている」
そうした自分(年下上司)に対することの場合は、放っておきましょう。
知らないふりで何の問題もありません。
一方で、チーム方針や全体に関わることで、年上部下がチームに悪影響を与えているようならすぐに対処します。
この場合、オープンな場で年上部下に不満を言わせるようにすることが有効です。
例えば、チームミーテイングで、本人に質問して話を振り、年上部下が不満に思っている内容を議題として挙げ、メンバーの前で話し合いを行いましょう。
そして、出てきた不満や反対意見に対して、上司としてきちんと回答、説明を行いましょう。
オープンな場で、年上部下が何ら意見を言わないこともあるかと思います。
その場合は、放っておいて問題ありません。
他のメンバーは、陰で色々言ってたのに上司の前では言わないのかと呆れるだけです。
そんな人にチームに対する影響力は生まれません。
影響力のない人の話は、上司は気にする必要はありません。
年上部下のモチベーションを上げる方法
役割を与え、居場所をつくる
役割を与え、居場所を作ることで活躍している事例があります。
部門間の調整役、人脈を活用する役割は適任のようです。
年上部下は、マネジャー以上に社内、社外にさまざまな人脈を持っていることがあります。
そうした、これまでの実績や経験を生かした役割で活躍する例が見られます。
得意なことを任せる
年上部下は、成長へのモチベーションがないことが多く、新しいことに取り組むのを避ける傾向があります。
そのような場合、割り切って得意なことを任せるというのが、お互いにとって良いケースもあるようです。
育成の役割を任せる
自身の知見を若手に継承したいなど、育成に前向きな方では、若手の育成で活躍している例が見られます。
ただし、若手はデキル人に指導を受けたいと考えているため、年上部下に役割を与えることを優先し、教えるスキルやマインドのない人を後進指導にあてると、若手にとってマイナスに働いてしまいます。
後進育成の役割は慎重に判断しましょう。