クリティカルシンキングとは
物事の結論を導く過程において、「なぜ」「本当にそうなのか」と批判的に問うことで納得のいく結論に到達するための思考法です。
critical(クリティカル)とは、「批判的な・批判眼のある」等の意味を持つ単語です。クリティカルシンキングを直訳すると「批判的思考」となりますが、ただ物事を批判的に捉える思考という意味ではありません。
自分が普段無意識にとっている行動や考え方を意識化し、客観的かつ分析的に振り返るという意味で用いられます。
批判的思考というものは、決して何かの物事を否定しようとする考え方ではありません。
ものごとの前提やある結論に疑問を持つことで、本質的な事柄に歩み寄ろうとする思考法です。
クリティカルシンキングのメリット
クリティカルシンキングは、物事の本質に気づき問題解決の糸口をつかむことや、多面的な見方により論理の欠点や不足の補強ができる点です。
クリティカルシンキングを用いて、当たり前に存在していた出来事に対して「それはなぜか?」「どうしてそうしたのか?」と批判的に捉えて改めて考えることで、これまで当たり前に行っていた業務の無駄を発見したり、新たな価値やビジネスを生み出すきっかけに繋げることができます。
クリティカルシンキングを発揮するための基本姿勢
1. 目的は何かを常に意識する
検討する課題に対し、ただ対処するのではなく、本当の目的は何か常に意識し、その根本解決を目指します。目的を意識しないでいると、本来求めているゴールとどんどん外れて言ってしまい、本来の目的とは異なることばかり深ぼってしまうようなことになりかねません。
2. 自他に思考のクセがあることを前提に考える
クリティカルシンキングを行おうとする際は、自分の思考のクセを客観視することが必要です。
人は誰しも様々な認知バイアスを持っており、無意識の思い込みや偏見、価値観といった思考のクセがあると認識したうえで、客観的に考えなければなりません。
3. 問い続ける
あくまでも批判的な姿勢を崩さず、考え続けることが重要です。批判的に捉え考えることはパワーが必要ですが、問題解決まで物事を突き詰めていく姿勢が必要になります。
※参考:『グロービスMBAクリティカル・シンキング』グロービス経営大学院著
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
クリティカルシンキングよりメジャーなビジネス用語に、「ロジカルシンキング(logical thinking)」があります。
logical(ロジカル)とは、「論理的な・筋の通った」等の意味を持つ単語であり、ロジカルシンキングは「論理的思考」と訳されます。
ある問いに対し、根拠を用いて論理的に結論を導き出す思考プロセスのことで、目の前にある事象を分かりやすく分解・整理・分析する事で、より合理的な解を導き出そうとする思考法です。
問い→結論→それに対する根拠という一方向の論理プロセスになります。
一方、クリティカルシンキングではロジカル(論理的)な正しさだけでなく、結論を疑う思考プロセスであり、物事の「妥当性(本当に正しいのかどうか)についても検証する思考法です。
ロジカルシンキングのように一方向の論理にはならず、より多面的に、結論や根拠、問い自体を疑い、何度も検討することで、より精度の高いものに仕上げていく論理プロセスです。
例えば、売上、顧客数、店舗面積、原価率、人件費、広告宣伝費、利益などの事業数値を基に、どのような組み方をすればより効率的に、もっと多くの売上や利益を上げることができるか、と現状(根拠・ファクト)を分析し、答えを導きだそうと考えるのはロジカルシンキングです。
一方、クリティカルシンキングでは、基礎となるデータそのものについても批判的に捉えて志向します。
例えば、「売上が落ちているのは本当に景気の影響だけなのか?」「1リード当たりの告宣伝費は適切なのか?」「プライシングは本当に妥当なのか?値上げできないか?」といったように、現状を批判的に捉え、仮説立てをし、本質的に検証していきます。
- クリティカルシンキング:本当にその前提が正しいのか検証したうえで本質を見極めること
- ロジカルシンキング:物事を筋道立てて、要素に分解して考えること
この2つは対立する考え方ではなく、両方を適切に用いることが重要です。実際のビジネスにおいては、明らかになっているファクトをベースにロジカルシンキングを使って考えた上で、クリティカルシンキングで批判的に見直して考えを深めたり、クリティカルシンキングで検証して出た仮設を、改めてロジカルシンキングを用いて他人に分かりやすく説明できるよう構造化する、というように組み合わせて用いられます。
普段から「本当にこれでいいのか?」「どうしてこうなっているんだろう?」とクリティカル(批判的)な視点を持って考えることで、より物事の本質に近づくことができ、生産性を高めたり、新たなアイデアに繋げることができるようになります。