メンバーが成長実感を持てるかどうかは、本人次第と思っていませんか?
実は、メンバーの成長実感にマネジャーが影響を与えられることは意外とたくさんあります。
今回は、メンバーの成長実感を高めるマネジメント方法について解説します。
成長とは?|人それぞれに定義が違う
成長の定義は、辞書を見ると「育って大きくなること」「一人前に成熟すること」と抽象的ではっきりしません。
これは、人それぞれに価値観や目指す方向性が異なり、成長したと感じるポイントも異なるため定義しきれないためです。
- 今までできなかったことが、できるようになること
- 今よりもっと上手くできるようになること
- 自分の限界の幅が広がること
- 自分で意思決定できる事柄が増えること
- より大きな課題解決ができるようになること
- 仕事に対して受動から能動になること
- 能力やスキルが向上し、それが活かせること
- 経験や知識、スキルに自信を持てるようになること
- 他者から認められること
現実的には、マネジャーがメンバーひとりひとりが何に「成長」を感じるタイプなのか、正確に把握するのは至難の業です。
しかし、まったく知らないのでは、メンバーに成長実感を持たせるマネジメントは不可能です。
ざっくりとした理解でも構いませんので、1on1などでメンバーが考える「成長」の理解に努めましょう。
成長のプロセス|技術的成長と精神的成長を繰り返す
成長には、技術的成長と精神的成長の2つの側面があります。
技術的成長:能力・スキルの習得や向上により、巧みな仕事ができるようになること
精神的成長:自信がつく、忍耐力・持続力・逆境に立ち向かう力がつくなど内面的な変化
人はまず、「この仕事を1人でこなせるようになりたい」など、技術的に成長したいという欲求を持ちます。
経験を積むにつれ、遅かれ早かれ仕事ができるようになり、「技術的成長」を実感します。
成功体験が重なり、周りから承認・称賛されるようになると自信がつきます。
この自信が最初の「精神的成長」になります。
一度認められると、同じ仕事の質ではなかなか褒められなくなります。
「もっと上手くできるようになりたい」という意欲が湧き、さらなる「技術的成長」につながります。
さらなる「技術的成長」は、さらなる「精神的成長」を引き起こします。
このように、技術的成長と精神的成長を繰り返して、人は成長していきます。
しかし、仕事に慣れてくると技術的成長は緩やかになり、惰性が生じます。
モチベーションの低下やキャリアの停滞感を感じるようになります。
ある仕事を何年かすると、転職したい人や、異動したい人が増えるのも、この停滞感が1つの理由です。
新しいことにチャレンジする方が、簡単に技術的成長ができ、成長実感を得やすいからです。
会社や上司からすると、一人前に育成したメンバーが退職するのはかなりの痛手です。
仕事に慣れてきたタイミングでは、新しいミッションや役割を与え、惰性でこなせる状態を作らないことが重要となります。
成長には、2つの軸がある
成長には、縦軸(高さ/深さ)と横軸(広さ)の2軸があります。
同じ仕事の中で更なる成長を目指すのは、能力やスキルを高める(深める)「縦軸の成長」です。
転職や異動をして全く新しいことにチャレンジするのは、能力やスキルの幅を広げる「横軸の成長」です。
茶道や武道の言葉で「守・破・離」という言葉がありますが、縦軸(高さ/深さ)の成長にはこの考えが参考になります。
- 守 : 基本・基礎を守り、仕事をこなせる状態
- 破 : 仕事の基礎を破り、試行錯誤をしながら自分流のスタイルに挑戦
- 離 : 基礎から離れ、新たな知識やノウハウを創造
「守」の状態が続くと、メンバーは停滞感を感じるようになります。
「破」を思考させるようなミッションや役割を与え、業務のレベルを高めましょう。
この時ネックになるのが、同じ組織内で真新しい仕事はそれほど発生しないことかと思います。
その際は、責任範囲を広げ、部下自身が意思決定できることを増やすことで、業務のレベルを上げることを考えましょう。
- 上司の権限を一部委譲し、意思決定を任せる
- 業務プロセスの見直しや標準化のミッションを与える
- メンターとして新人育成の役割を与える
成長を実感するタイミング|承認・称賛の重要性
マネジャーとしてメンバーの成長実感を高めるには、実際に成長させることだけでなく、「成長を実感させるタイミング」を作ることも重要です。
たとえ日々少しずつ能力・スキルが向上していても、仕事の中で日々成長を実感している人は少ないと思います。
成長を実感するのは、「目標を達成した」「プロジェクトをやり遂げた」「評価された」「認められた」「褒められた」などのタイミングです。
目標達成やプロジェクトの完遂などは、成果が出るまでに時間かかることも多く、普通に仕事をしているだけでは、成長を実感するタイミングが少なくなり過ぎてしまいます。
メンバーが成長実感を感じられるタイミングをつくるためには、マネジメントに承認・称賛を積極的に取り入れることが重要です。
「褒めるタイミングが中々ない」と承認・称賛に苦戦する方もいらっしゃいますが、成果を褒めることだけが承認・称賛ではありません。
結果承認、プロセス承認、行動承認、意識承認、存在承認という5つの承認レベルを理解し、承認・称賛する機会を増やし、成長実感を高めるマネジメントを行いましょう。