マネジメントをしていると、判断の難しい複雑な問題に出会うことは日常茶飯事です。
複雑な問題の判断を早く行うためには、どうしたらよいのでしょうか?
今回は、ブレない判断軸の作り方や、判断のスピードを上げる方法について解説します。
ブレない判断軸の作り方
複雑な問題をシンプルに判断するためには「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」を、マネジャーが理解することが大切です。
- 自分たちのチームは何のために存在するのか?
- どんなゲームをしているのか?
この2つが、自分の中に確固たる判断軸を持ち、複雑な問題に対処できるようになるカギになります。
大手通販プラットフォーム企業を例に考えてみましょう。
私たちは、いつでも自宅で、欲しいものがすぐに手に入る社会を実現するために存在する。
私たちは、地球上で最もお客様を大切にする企業であり、お客様を起点に考える。
「価格」「品揃え」「配送スピード」「サイトやアプリの使いやすさ」がビジネスの成否を分けるゲームをしている。
- 私たちは、いつでも自宅で、欲しいものがすぐに手に入る社会を実現するために存在する。
- 私たちは、地球上で最もお客様を大切にする企業であり、お客様を起点に考える。
- 「価格」「品揃え」「配送スピード」「サイトやアプリの使いやすさ」がビジネスの成否を分けるゲームをしている。
ここで重要なのは、メンバーの行動や判断に影響が与えられる「具体性のある言語化」を行うことです。
事業部、部、課といった組織の階層レベルにより、「どんなゲームをしているのか」は変わります。
自身がマネジメントする組織より大きな設定だと、抽象的になりすぎ、現場レベルでの判断軸としては使えない可能性があるためです。
たとえば、上記企業の配送チームのマネジャーであれば、先程の内容をさらにブレイクダウンしなければ判断軸としては使いにくいです。
- 私たちは、いつでも自宅で、欲しいものがすぐに手に入る社会を実現するために存在する
- 私たちは、地球上で最もお客様を大切にする企業であり、お客様を起点に考える。
- 「時間どおりの配送」「誤配送の少なさ」「配送スピード」「配送コストの安さ」がビジネスの成否をわけるゲームをしている
このように、自信がマネジメントする組織レベルの具体性を持った言語化を行えば、その基準に即した判断を行うことが可能になります。
複雑な問題で、判断のスピードを上げるには
複雑な問題でも判断のスピードを上げるには、先程設定した「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」を基準にシンプルに判断することです。
判断軸を持っていれば、判断のスピードは上げれます。
たとえば、会社組織において起こりがちな難しい問題のひとつに、平等や公平に関するものがあります。
「平等や公平は重要である」とは、多くの人が持っている価値観のため、マネジャーは平等性や公平性に関する不満が出た際に、どう判断すればよいか迷ってしまいがちです。
あるメンバーが、不公平だと不満を募らせ、上司に意見を言ってきました。
上司はどう答えたらよいものか悩んでしまいます。
そんな上司を見て、他のメンバーは優柔不断だと管理職に不満を持ちます。
こんなケースでも、マネジャーは「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」を基準にシンプルに判断すればよいのです。
平等や公平は考慮されるべきものです。
しかし、会社組織はビジネス上の目的のために存在しており、メンバーの平等や公平のために存在しているわけではありません。
常に優先されるのは「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」
たとえば、先の例題の企業で、配送を支える配送チームだけ、リモート勤務がしにくかったとします。
配送チームのあるメンバーが、下記のように進言してきたとしましょう。
「他のチームだけズルい、不公平だから自分たちもリモート勤務を増やしてほしい」
配送チームのリモート勤務を増やすことで、下記が起こると想定されました。
・トラブル対応がスピーディーに行えないことで、配送への悪影響が出る
マネジャーはどうすべきでしょうか?
こんな時にも、平等や公平よりも優先されるのは「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」という判断軸です。
- 私たちは、いつでも自宅で、欲しいものがすぐに手に入る社会を実現するために存在する
- 私たちは、地球上で最もお客様を大切にする企業であり、お客様を起点に考える。
- 「時間どおりの配送」「誤配送の少なさ」「配送スピード」「配送コストの安さ」がビジネスの成否をわけるゲームをしている
配送スピードが遅くなれば、存在意義である「すぐに手に入ること」から遠ざかります。
トラブルへのレスポンスが遅くなれば、最も大切なお客様は不満に感じるでしょう。
配送スピードが遅くなれば、ゲームで負けてしまいます。
つまり、配送への悪影響を回避できる方法を見つけない限り、今回の要求を受け入れることはできません。
上司として、受け入れられない判断を伝え、きちんと理由を説明します。
ビジネスの目的を果たすためには、メンバーが不公平や不平等を受け入れなければならない場面も発生します。
それは仕方のないことです。
会社組織で常に優先されるのは「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」だからです。
上司の意思決定にスムーズに納得してもらうために
「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」、メンバーに日頃から伝えるようにしましょう。
この共通認識がチームに浸透していれば、メンバーは上司の判断をすんなり受け入れることができるようになります。
メンバーが望む答えでなかったとしても、上司が普段から判断軸を伝えていれば、納得してもらえる可能性が高まります。
上司は行きあたりばったりで判断したのではなく、一貫性を持った判断をしていることがメンバーにも分かるからです。
また、「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」を伝え続けることは、不満そのものを抑制します。
「何のゲームをしていて、今どういう状態か」メンバーが分からない状態では、メンバーの不満は発生しやすくなります。
「このゲームに勝つためには、今の状況ではこうすべきだ」という共通認識が無いので、個々のメンバーのバラバラな考えや価値観が重視されてしまうからです。
残り時間5分でチームは3点負けている。
Aさんは1点しか取れないけれど、Bさんなら5点取れる可能性がある。
この場合、チームが勝つためにBさんにパスを出すのは、ビジネスとして当然の判断です。
チームには目的があります。
置かれた状況によっては、平等にチャンスを与えるわけにはいきません。
マネジメントをしていると、判断・意思決定をくださなければならない場面は頻繁に訪れます。
こちらを立てればあちらが立たず、といった難しい問題にも直面するでしょう。
判断を放置してはメンバーからの信頼を失ってしまいますし、仕事もどんどん溜まっていきます。
判断軸のないリーダーは、メンバーから信任を得られません。
常に優先されるべきは、会社組織における目的であり、顧客に選ばれることです。
「自分たちは何のために存在し、どんなゲームをしているのか」
自らの判断軸として設定するとともに、メンバーに日々周知していきましょう。