「中間管理職のうつ」「昇進うつ」といったワードで、管理職のメンタルの問題は度々メディアでも取り上げられてきました。課題意識を持ち、悩まれている企業も少なくありません。
今回は、中間管理職の孤独について考え、管理職の心構えとその対処法、企業ができる対策について解説します。
メンタル不調の悩みが最も多いのは40代男性
「役職がつきマネジャーになった、課長になった」多くの人にとって昇進は喜ばしいことですが、いざ実際に業務を始めると「孤独」を感じ、大きなストレスになってしまう方が一定数いらっしゃいます。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会の調査によると、下記のように中間管理職の方々が多い年代に、メンタルの問題が多いことが分かります。
- メンタル不調の相談全体の約4分の1は40代男性から
- 男女とも相談の7割が30代~50代
- メンタル不調・病気の相談は男性は女性の2倍以上
※全国の日本産業カウンセラー協会・相談室への対面による相談と電話相談「働く人の悩みホットライン」の相談件数を集計
出典:https://www.counselor.or.jp/Portals/0/pdf/1.press%20release1901.pdf
なぜマネジャーはなぜ孤独を感じやすいのか?|プレッシャーの要因
メンバーとマネジャーでは、プレッシャーの度合いが大きく異なります。
まずは、そのプレッシャーの要因について知っておくことが重要です。こうしたプレッシャーが増えるんだなと心構えをしておきましょう。
具体的には、下記のような要因があります。
責任範囲・業務量の増加
メンバーのマネジメントが初めて業務範囲に入ってくることになりますが、複数いるメンバーのマネジメントは思った以上に大変です。まともにマネジメントを行おうと思えば、メンバーとのコミュニケーションに多くの時間を取られます。
産業能率大学が発表した『第5回上場企業の課長に関する実態調査』では、課長職の実に98.5%が、自身でプレイヤー業務を抱えており、そのような中で、部下とのコミュニケーションに最も多く時間を割いていることが分かりました。
プレイングもマネジメントもこなさなければならず、マネジャーは非常に忙しい状況が見て取れます。
また、3年前と比べ業務量が増えていると答えた課長は約6割。悩みのTOPは仕事量が多すぎる、でした。
参考:https://www.sanno.ac.jp/admin/research/kachou2019.html
相談できる人の減少
立場が上がっていけばいくほど、相談できる人は少なくなります。隣のマネジャーに相談するのは心理的に難しいですし、社内でアドバイスができる人も限られてきます。
褒められる機会の減少
管理職になるような方は、これまでパフォーマンスを出してきた方が大半であり、メンバーの時は成果や行動について褒められる機会が多かったはずです。
しかし、マネジャーになると褒められる機会は減少します。結果責任が求められるので、プロセスについては評価されず、また個人レベルでなくチームの結果でしか評価されなくなり、承認称賛される機会は大きく減少します。
自分をフォローしてくれる人が少なくなる
メンバーの時には、先輩や上司が助けてくれることもあったと思います。
しかし、管理職ともなると、逆にメンバーを助ける立場となり、困難も自分で乗り越えなくてはなりません。
自分ひとりで決断して物事を進めなければいけない場面が大幅に増えることになります。
弱みを見せにくい
立場が上がると周囲に弱みを見せにくくなります。弱いリーダーと思われてしまうからです。困難な状況でも強くあろうとすることは、緊張状態を発生させますので大きなストレスになります。
管理職の孤独は誰もが感じるもの|どのように対処すべきか?
業務量が増えている中では、いかに任せていくかを考えなければ、どんどん業務量が増え、プレッシャーが大きくなってしまいます。
では、孤独を感じた時にどうしたらいいのでしょうか?
管理職、企業それぞれの面から、いくつか対処法をご紹介します。
- 成長のチャンスだと捉える
どんな人にも、程度の差はあれ孤独を感じる瞬間は必ずあります。
リーダーシップを獲得する過程に必要なものと思い、成長のチャンスと捉えましょう。
- 誰よりも汗を流す(率先垂範)
周りがついてきてくれない時は、誰よりも汗を流しましょう。
まずは、2割の心を掴み賛同者にすることです。
賛同してくれる2割ができたらその意見を聞きながら、残りの6割の傍観者に役割を与え巻き込んでいきましょう。
否定的な2割の変化は、マネジメントに限らずどんな場合でも難しいものです。
焦らずすぐの変化を期待しない。否定者の2割に気持ちを取られないようにしましょう。
- ビジネス書を読む
一人で悩まず、その時に読みたいなと思ったビジネス書を手に取りましょう。
現状を改善するヒントが得られたり、勇気をもらえるはずです。
セオリーや他者の実体験からの学びは、問題解決の糸口になることもあります。
困難を乗り越えた人の本を読めば、自分の悩みがちっぽけに感じ勇気をもらえるかもしれません。
- 社外のビジネスパーソンと接点を持つ
社内の人に相談すると「俺もそういう時期があった、こうして乗り越えた」という励ましはもらえますが、個人のイチ体験で汎用性がなかったり、時代が異なり使えなかったり、または精神論を諭されて終わってしまう、といったことになりがちです。
悩んだ時は、視野を広げるために、社外の人と積極的に交流を持ちましょう。
社外の人に対しては、体面を気にしたり、変にプライドを持つ必要もありません。
違う価値観を知ることで、今ある孤独と向き合えるようになったり、解決方法が見つかったり、新しい発見があるはずです。
- 時には弱みを見せて良い
「弱みは見せれない」「失敗できない」そんな風に考え、肩肘を張って強いリーダーでいなければと思う必要はありません。
完璧主義で人間くさくない上司に対する部下のアンケート調査の結果は、大概低いものです。
時には自分の弱さをみせても構いません。弱さをさらけ出せることも強さです。
- 社員自身のセルフチェックを促す
新任管理職研修の際には、管理職自身も心理的な病気になるリスクがあることを認識してもらいましょう。
多くの企業ではメンバーのメンタルケアについては時間を割いて話をしていても、管理職候補たちが昇進により病んでしまう可能性を想定していません。
- 社内外のコーチやカウンセラーなどによるケアを充実させる
社内にメンタルヘルスの専門家がいない場合、外部機関やサービスも検討しましょう。
管理職はプライドや仕事への自信をある程度持っているため、最悪の状態になるまで自ら相談にいかない傾向があります。
相談を促すこと、そういったサポートがあることを周知することが必要です。
孤独を感じたら、悲観せず行動を変えてみよう
いかがでしたでしょうか?
多くの管理職は何らかのプレッシャーにさらされており、誰もが多かれ少なかれ孤独を感じる場面を経験しています。
乗り越える過程での難しさは誰にでもあります。
マネジメントがうまくいかない時に、自身の能力不足やリーダーとして不向きと考え悲観する必要はありません。
独りで悩まず、今回ご紹介した方法を参考にしながら、リーダーの孤独を乗り越えていきましょう。