新型コロナウイルスの影響で、広まったテレワーク(在宅勤務)。今後オフィスワーク(出社)とテレワーク(在宅)のどちらを希望するかという各種アンケート調査では、管理職では「オフィスワーク(出社)」という声が多いようですが、一般社員は「テレワーク(在宅)」という考えが多いようです。
どういった勤務形態を選ぶにせよ、このギャップを放置したまま進めていくと、社員の不満につながってしまうため、きちんと対処しておくのが賢明です。
今回は、管理職とメンバーで割れるテレワークの評価と、そのギャップの埋め方についてご紹介します。
ギャップは立場による認識の違いから生まれる
4月から新任管理職となったAさんは、「メンバーの時はテレワーク推進派で、会社に対して要望を出したりしていたが、管理職になった今はオフィスワークに戻してほしいと考えている」と、自身の考えが180度変わったことを話されていました。
理由を伺うと、「チームの業績に責任を持つようになったことで、チームメンバーの仕事ぶりが見えないことへの不安が大きい」「テレワークの経験やノウハウがなく、マネジメントが難しい」とのことでした。
Aさんは自身の業績目標は常に達成し、チームが不調な時は自分が頑張ってチーム達成に導くような中核人材で、その結果、管理職に昇格した優秀なメンバーでした。
そんな優秀なAさんでも、いざ管理職となりチーム業績に責任を持つようになるまでは、マネジメント難易度が上がることなどのデメリットは思い浮かばず、働きやすくなるメリットだけ考えて意見をあげていました。
このように、立場(責任範囲)により認識する目標や課題が異なるため、テレワークの継続についても意見にギャップが生まれてしまうのです。
テレワークに対する「振り返り」と「結果の共有」を実行
テレワークに対する評価も、立場の違いによって発生するギャップのため、時間が解決する問題ではありません。きちんと相手の立場での意見も踏まえつつ、コミュニケーションで折り合いをつける必要があります。
経営や人事から社員に対してコミュニケーションを取ることはもちろんのこと、管理職もそれがきちんと伝わるようフォローすることが重要です。
テレワークの出口戦略として行っておくべきなのが、きちんとした「振り返り」です。 あまり深く考えずに「テレワークどうだった?」と質問を投げかけると、それぞれメンバーの立場で意見をするため、 「通勤時間がないのはいいよね」
「満員電車から解放されていい」
「家から出なくなるから健康に気をつけなきゃ」
といった振り返りで終わってしまいます。
これでは、メンバーは会社や管理職の立場でのデメリットを認識できません。
会社や管理職と、メンバーの立場の差によるギャップを埋めることが目的なので、広い視野で問題点や課題を事前に洗い出し、伝え方を考えましょう。
様々な立場から見てみると、テレワークの問題点は以下のようなものがあります。
「行動が見えない分、ちゃんと働いているのか?という不安がある」
「タイムリーな進捗把握が難しくフォローが遅れてしまう」
「OJTによるメンバーの育成・指導は、テレワークだとうまく機能しない」
「労働時間管理が難しく、働きすぎの問題など社員の健康へ不安がある」
「用件以外の会話が発生しづらく、ちょっとしたことの相談が難しい」
「個人個人で仕事を進める状態になり、チームの一体感を感じづらくなる」
「在宅だと子供やスペースの問題で仕事がしにくい」
人事や管理者サイドが感じる課題は、多くのメンバーは課題と感じていません。
振り返りを行う際は、きちんとメンバーが気づいていない課題についても共有し、オフィスワークに戻す判断の理由について伝えるようにしましょう。
そうすると、テレワークを続けるために解決すべき課題が管理職とメンバーで共有認識となります。中には解決策を提案してくれるメンバーも出てくるかもしれません。
新しい働き方には社員とのコミュニケーションが欠かせない
今回テレワークに移行したことで、テレワークができたという「事実」が作られました。そのため、これまで以上にメンバーからのテレワークの希望が強くなることが想定されます。
メンバーに不満を感じさせないためにも、オフィスワークに戻る場合は、テレワークの振り返りをきちんと行いましょう。
テレワークによる会社全体でのプラス面、マイナス面をきちんと共有し、なぜオフィスワークに戻すのか(何を解消できればテレワークにできるのか)をメンバーに理解して貰えば、立場の違いによるギャップが解消でき、メンバーが大きな不満を持つ事なくオフィスワークに戻れるはずです。
経営や人事、管理職が協力し、社員とのコミュニケーションがおざなりにならないよう心がけてください。