組織の成功には、適正なチーム人数が重要です。
しかし、何が「適正」なのでしょうか?
本コラムでは、経営学の理論やGAFAの実践に基づいて、効果的なチーム人数について探ります。
スパン・オブ・コントロールの概念を深掘りし、チーム規模が大きくなりすぎた場合の対策も紹介します。
適正なチーム人数の理解を深め、マネジメントの改善に役立てましょう。
チームの適正人数は?|スパン・オブ・コントロール
よくサーベイ結果を見て「あの組織長はマネジメント能力が低いみたいだ」と言われる方がいらっしゃいますが、必ずしもそうとは言えません。
なぜなら、マネジメント能力が原因ではなく、マネジメント人数が多すぎることが原因の可能性もあるからです。
複数の企業のサーベイ結果を分析している弊社のような立場からすると、マネジメント人数の多さとサーベイ結果は反比例する傾向があることが分かっています。
つまり、マネジメント人数が多くなれば、マネジメントは難しくなる(サーベイの結果は悪くなる)ということです。
スパン・オブ・コントロールとは経営学で使われる用語で、ひとりのマネジャーが直接管理している部下の人数や、業務の領域(範囲)のことです。
元は軍の編成・組織構成の際の考え方で、その後企業経営にも適用されるようになりました。
一般的に、スパン・オブ・コントロール(1人の上司が直接管理できる適正人数)は5~7人程度とされます。
実際に弊社のお客様でも、この人数を超えて従業員サーベイのスコアが高いというチームはめったに見られません。
おおよそ5〜7名くらいの人数を目安に、ひとつのチームを作るべきです。
歴史上のさまざまな文明でも、ひとつの組織単位は10名以下で構成されていたと言われています。
スパン・オブ・コントロールを超えた組織の場合、マネジャーは非常にマネジメントが難しい環境下にあることになります。
もちろん、スパン・オブ・コントロールは具体的な状況により異なります。
部下それぞれが異なる業務を行っている場合と、皆が同じ業務を行っている場合とでは、部下一人あたりのマネジメントコストは後者の方が少なく、管理できる人数は変わってきます。
スパン・オブ・コントロールに影響を与える要因としては、「部下の業務内容や業務レベル」「権限委譲が可能かどうか」「業務管理手法の効率化度合い」「教育・トレーニングによる能力向上」「社内制度やシステム」など複数存在します。
企業におけるスパン・オブ・コントロールの事例
Amazon
Amazonの創業者で先日CEOを退任したジェフ・ベゾス氏が「2枚のピザ理論(チームの最適な人数は2枚のピザを分け合える程度(5~8人)である)」を提唱しています。
Googleが実施しているマネジャーの優れている理由を特定するため分析では、チーム人数は影響度の高い要素とはされませんでしたが、人数の少ない(10人未満の)チームの方が人数の多いチームよりも成功しやすいという結果が出ています。
マネジメント人数が多すぎることの悪影響
マネジメント人数が多すぎ、スパン・オブ・コントロールを超えてしまった組織では、メンバーや組織全体に悪影響が生じ、チームとして成果を上げることが難しくなります。
例えば、マネジャーとメンバーひとりひとりのコミュニケーション量が減ってしまい、意思疎通に問題が生じたり、すれ違いが発生しやすくなります。
また、メンバーのフォローや教育が疎かになり、成長が遅くなることも考えられます。
メンバーを多く抱えているマネジャーからは「コーチングの方が適した場面があるのは理解しているけれど、時間がなくてできない」という悲鳴のような声を聞くこともあります。
スパン・オブ・コントロールが適正人数を超えた組織では、マネジャーへの信頼は低下し、組織の統制は取れず、不要な軋轢やモチベーション低下が起こり、組織全体のチームワークや生産性が低下していきます。
特に、プレイングマネジャーで業務にかける時間を多くせざるを得ない場合は、スパン・オブ・コントロールに特に注意を払い組織の設計、チーム編成を行う必要があります。
マネジャー経験が浅い、またはマネジメント能力が低い人にスパン・オブ・コントロールを超えたチームを任せると、マネジャー本人の自信喪失とメンバーの不満が同時発生し、組織が崩壊してしまうことがあります。
スパン・オブ・コントロールの拡大|マネジメントできる人数を増やす方法
部下の育成と権限委譲
マネジャーが持っている意思決定権を部下に委譲することで、管理者の業務負担は減りスパン・オブ・コントロールは拡大します。
この権限委譲を進めるには、部下がある程度の判断力を持っていなくてはならず、管理職の権限の一部を引き受けられる人材の育成が必要となります。
部下への権限委譲が進めば、部下はマネジャーからの指示や判断を待つことなく自己判断で業務遂行が可能となり、マネジメントの負荷は軽減されます。
メンバー間の連携
メンバー同士の協力や助け合いが積極的に行われている組織では、管理者への負担が減り、スパン・オブ・コントロールは拡大します。
メンバー間の連携を強化するためには、お互いの目標や業務を共有することが重要です。
「誰が何をやっているのかが共有されている状態」ができれば、先輩が後輩をサポートしたり、メンバー間でのナレッジシェア、業務の効率化、といったお互いをフォローし合う協力行動が自発的に行われやすくなります。
業務の標準化
業務の手順や方法が定まっていないと部下が上司に指示を仰ぐ頻度が高まり、手間や時間をとられて、マネジャーが本来やるべき業務に割ける時間が減ってしまいます。
標準化が可能な業務を洗い出し標準化を進め、誰もが同じ方法、同じクオリティで業務を行えるようになれば、マネジメント負荷を軽減できます。
情報共有の効率化
ミーティングや1on1など、対面での情報共有も大切ですが、ITツール(チャットツールやタスク管理ツール、SFA、CRM、業績管理システムなど)の活用により、WEB上でのリアルタイムな状態把握、報告、相談ができるようになれば、時間効率を上げることができ、マネジメント負荷を軽減できます。
新たにリーダーを立ててチームを組成したり、マネジメントがうまくいっていないチームがある際は、スパン・オブ・コントロール(マネジメント人数)についてもチェックしてみてください。
本人の能力ややる気の問題ではなく、マネジメント人数が適正値を超えている環境が原因かもしれません。
現在スパン・オブ・コントロールを超えた人数を抱えているマネジャーの方は、ぜひ今回ご紹介したマネジメント人数を増やす方法を実践してみましょう。